リジェネラティブとは?カーボンニュートラル・サーキュラーエコノミーとの違いと企業戦略への影響

脱炭素の“次”を考える企業が増えている
こんにちは、斎藤英次商店マーケティングチームです。
最近、サステナビリティの議論の中で「リジェネラティブ」という言葉が急速に広がっています。
サステナブルの“次の段階”とも言われますが、リジェネラティブとは一体どのような考え方なのでしょうか。
ここ数年、企業のサステナビリティへの取り組みは急速に加速しました。
「カーボンニュートラル」「脱炭素」「ESG」「Scope1-3」「SBT」といった言葉は、すでにビジネスの基礎用語になりつつあります。
しかし同時に、現場からは次のような声も聞こえます。
・脱炭素は進めているが、事業が変わっている実感がない
・CO2削減はわかるが、資源循環や廃棄物の話は別部署でバラバラ
・取り組みが“点”で終わり、戦略としてつながらない
・結局コストだけが増え、利益に結びつかない
・そもそも脱炭素だけで社会課題は解決するのか?
この問いに答える形で、いま世界で注目されているのが
「リジェネラティブ(再生)」×「カーボンニュートラル」×「サーキュラーエコノミー(循環経済)」
という統合の考え方です。
本記事では、まず3つの概念の違いと関係性を整理し、なぜ企業の競争力に直結するのかをわかりやすく解説します。
カーボンニュートラルとは何か
カーボンニュートラルの定義
カーボンニュートラルとは、温室効果ガス(GHG)の排出量を実質ゼロにすることです。
省エネや再エネ導入などで排出を減らし、残った分は吸収・除去(森林、CCUSなど)で相殺します。
「カーボンニュートラル」よりさらに厳格な概念としてネットゼロ(Net Zero)が使われることもあります。
企業が取り組む範囲:Scope1-3
企業の排出は、Scope1〜3に分類されます。
・Scope1:自社で直接排出(燃料・工場など)
・Scope2:購入したエネルギー由来の排出(電力等)
・Scope3:サプライチェーン全体の排出(原材料、物流、廃棄など)
重要なのは、Scope3の比率が大きい業界ほど、自社だけ頑張っても排出は減らないということです。
ここで重要になるのが“循環経済”です。
サーキュラーエコノミー(循環経済)は「リサイクル」ではない
循環経済の誤解:「リサイクル=循環」ではない
循環経済と聞くと、多くの人は「リサイクルを頑張る話」だと捉えがちです。
しかし循環経済は、リサイクル“だけ”ではありません。
むしろリサイクルは、循環のプロセスの中では最後の手段に近い位置づけです。
循環経済の本質は、そもそも廃棄物が出ないように設計する経済モデルです。
循環経済の基本:価値を失わせない
循環経済のキーワードは「価値の保持」です。
製品や素材が廃棄されると、そこに含まれていた価値が失われます。
循環経済は、価値が失われないように設計します。
・リユース(再使用)
・リペア(修理)
・リファービッシュ(再生)
・リマニュファクチャリング(再製造)
・リサイクル(再資源化)
この順番で価値を高く保つほど、資源投入もCO2排出も減りやすくなります。
つまり循環経済は、脱炭素にも直結するのです。
リジェネラティブとは何か:「持続」ではなく「回復」
リジェネラティブ=再生
いよいよここでリジェネラティブです。それは、自然・社会・地域を回復・再生させることを目指す思想です。
・サステナブル(Sustainable):壊さない
・リジェネラティブ(Regenerative):治す・増やす
つまりリジェネラティブは「守り」ではなく「攻め」の概念です。
なぜ“再生”が必要なのか
なぜ持続だけではなく“再生”が必要なのでしょうか?
理由はシンプルです。すでに自然も社会も多くが損なわれているからです。
・森林劣化
・生物多様性の減少
・土壌の疲弊
・水循環の崩れ
・地域経済の空洞化
・人材不足やコミュニティの衰退
この状態で「今を維持する」だけでは、未来は良くなりません。
だから、企業活動を「社会と自然を再生する方向へ設計し直す」ことが必要になっています。
リジェネラティブの具体例
例えば、再生型農業(リジェネラティブ農業)があります。
単に農薬や化学肥料の使用を減らすのではなく、土壌の微生物を活性化させ、有機物を増やし、炭素を土壌に固定させることで、土地そのものの生産力を回復させる取り組みです。
これは「環境負荷を減らす」だけでなく「自然資本を増やす」行為です。
企業活動に置き換えると、廃棄物を減らすだけでなく、地域雇用を生み、森林を再生し、資源循環によって地域経済を活性化させる事業設計こそが、リジェネラティブの発想です。
近年では、COP30で議論されたアマゾンの森林劣化問題のように、自然資本の回復が国際的な経済課題として扱われるようになっています。
3つの違いを“目的”で整理する
ここで3つの違いを目的で整理します。
・カーボンニュートラル(CN):CO2排出を実質ゼロにする
・サーキュラーエコノミー(CE):資源循環で廃棄を減らし、価値を保持する
・リジェネラティブ(Regenerative):自然・地域・社会を回復させる
この整理をすると見えてくるのが、
・CN:排出を減らす(マイナスを減らす)
・CE:廃棄を減らす(ロスを減らす)
・Regenerative:回復させる(プラスを増やす)
という構造です。
つまり、CNとCEは“減らす”戦略、リジェネラティブは“増やす”戦略です。
なぜ今、3つを統合する必要があるのか
ここからが重要です。
3つを統合しないと、企業の取り組みは次のような限界に突き当たります。
脱炭素だけ進めても、資源は枯渇する
脱炭素はCO2に焦点が当たります。しかし地球の危機はCO2だけではありません。
資源の過剰消費、廃棄物の増大は同時進行しています。CO2を減らしても、資源が枯渇したら事業は止まります。
循環を進めても、自然が回復しない場合がある
循環は廃棄を減らしますが、必ずしも自然を回復させるとは限りません。
例えば、ある素材をリサイクルしていても、その回収・加工工程で大量のエネルギーを使っていたらCO2は増えます。
また、循環によって地域が潤うとは限りません。単にコスト削減だけの循環もあり得ます。
統合すると、事業価値が変わる
3つを統合すると、企業は単に「環境に配慮する」存在ではなく、
・脱炭素を加速し
・資源循環を設計し
・地域と自然を回復させる
という、社会に不可欠な存在になります。
これは企業価値そのものを変えます。
3つを統合すると“経営戦略”になる
サステナの取り組みが失敗する最大の理由は、「CSRの延長」になってしまうことです。
統合すると何が変わるのか?
サステナが“コスト”から“利益”へ変わる
循環を設計すると、
・廃棄物のコスト削減
・資源の安定調達
・物流コスト削減
・再生材の価値化
が可能になります。
さらに脱炭素と結びつくことで、
・Scope3削減効果
・取引先評価の向上
・サステナ調達対応
・ESG投資への対応
など、収益に直結する要素が増えます。
リジェネラティブが加わると“社会資本”を増やせる
リジェネラティブが加わると、企業は
・地域資本(雇用・産業)
・自然資本(森林・水・土壌)
・人材資本(働きがい・教育)
を増やす仕組みになります。
これが長期的に「企業が存在し続ける基盤」になります。
これからの企業の使命は「減らす」から「回復させる」へ
ここまでの話をまとめると、未来の企業の使命はこうなります。
・CO2排出を止める(CN)
・廃棄物を止める(CE)
・自然・地域を回復させる(Regenerative)
つまり、「壊さない」から「回復させる」へ価値創造の定義が変わるのです。
まとめると、3つの統合は“未来の成長戦略”
◆カーボンニュートラルは必要条件
◆サーキュラーエコノミーは経済構造の再設計
◆リジェネラティブは回復と再生の価値創造
CNは「症状」への対応であり、CEは「構造」への対応であり、リジェネラティブは価値の転換という関係性です。
そしてこの3つを統合できる企業は、将来の規制強化、資源制約、資本市場の変化に対して最も耐性が高い存在となり、長期的な競争優位を築く可能性が高いのです。